保険を勉強したら、保険が売れなくなった。

以前、

生命保険の営業をしていたことがある。

その仕事を始めた頃、

僕は大きな保障を持ってもらうことに、

かなり自信を持っていた。

今頑張って保険料を払って、

将来のためにしっかり備える。

それは、

お客さんのためになる。

本気でそう思っていた。

だから、

自信を持って提案できた。

ところが、

保険以外の金融商品や経済のことまで勉強するようになって、

少しずつ考えが変わっていった。

最終的には、

保険を勉強すればするほど、保険が売れなくなった。

そんな感覚になっていた。

目次

最初は、大きな保険に入ることがお客さんのためだと思っていた

営業を始めた頃は、

保険料が高いことを、

単純に悪いとは思っていなかった。

むしろ、

若いうちから頑張って積み立てる。

長く続ける。

将来、

まとまったお金ができる。

保障もある。

それなら、

できる範囲でしっかり入ってもらった方が、

お客さんのためになる。

そんな考えだった。

別に、

「手数料が高い商品を売ってやろう」

と思っていたわけではない。

本当に、

それが良いと思っていた。

だからこそ、

営業としても強かったんだと思う。

他の金融商品を知って、少しずつ疑問が出てきた

転機になったのは、

保険以外の金融商品や、

経済のことを勉強するようになったことだった。

そこで、

ふと思った。

「資産形成の商品として見たら、保険って結構厳しくない?」

と。

僕が扱っていた商品の中には、

長く続けて初めて、

解約返戻金が払込額に近づいたり、

上回ったりするものがあった。

それ自体は、

最初から説明されている。

問題は、

その「長く続ける」が、

20年、30年という世界になることだった。

20年、30年、同じ生活が続くとは限らない

20代で契約する。

その時は、

毎月この金額なら払える。

そう思っていても、

人生は変わる。

転職するかもしれない。

結婚するかもしれない。

子どもが生まれるかもしれない。

家を買うかもしれない。

収入が下がることもある。

逆に、

急に大きなお金が必要になることもある。

そんな中で、

最初に決めた保険料を、

何十年も同じように払い続けられるとは限らない。

そして、

商品によっては、

早い時期に解約すると、

払った保険料より解約返戻金が少なくなることもある。

金融庁も、保険商品は長期保有を前提とするものがあり、早期解約では解約返戻金が払込額を下回る場合があることを説明している。

ここが、

僕にはだんだん気になるようになった。

超長期なのに、途中で動きにくい

もう一つ、

気になったのがインフレだった。

20年。

30年。

それだけ時間が経てば、

今の100万円と、

30年後の100万円の価値が、

同じとは限らない。

超長期で考える商品なのに、

途中で環境が変わって、

「やっぱり別の方法にしたい」

と思っても、

簡単には動きにくい。

もちろん、

すべての保険商品が同じではない。

払い済みにする方法。

一部を減額する方法。

商品によって、

いろんな選択肢がある。

だから、

「貯蓄型保険は全部ダメ」

と言いたいわけではない。

でも、

特に若い人の資産形成として考えた時、

僕には、

もっと柔軟な方法があるように思えてきた。

それでも、当時はドル建てをかなり勧めていた

考えが変わってからも、

営業をすぐやめたわけではない。

その中で、

僕なりに、

自分が扱える商品の中で、

できるだけお客さんにとって良いと思えるものを選んでいた。

その結果、

当時はドル建ての商品をかなり勧めていた。

円建ての商品は、

ほとんど売らなかったと思う。

理由はいくつかあった。

資産を全部円で持つより、

一部をドルへ分散するきっかけになる。

世界的に使われている通貨でもある。

そして当時、

自分なりに経済情勢を勉強した中で、

長期的には円安方向へ動く可能性があると考えていた。

もちろん、

商談で、

「絶対円安になります」

なんて言ったことはない。笑

そんなこと分かるわけがない。

ただ、

自分が扱える商品の中では、

当時の僕なりに、

一番納得して提案できるものだった。

今でも、当時の判断を全部間違いだったとは思っていない

結果だけで金融商品を評価するのは危ない。

為替なんて、

逆に動く可能性もある。

それでも、

当時の自分が持っていた知識と、

扱える商品の中で考えた時、

ドル建てを中心に提案した判断は、

今でも全部間違いだったとは思っていない。

少なくとも、

何も考えずに、

手数料だけを見て商品を選んでいたわけではない。

自分なりに勉強して、

自分なりに、

お客さんにとってマシだと思えるものを提案していた。

だからこそ、

余計に苦しくなった。

お客さんに勧めたいものと、自分が売らないといけないものがズレていった

他の金融商品まで勉強した結果、

当時の僕が20代のお客さんへ考える最適解は、

かなりシンプルになっていった。

必要な保障は、必要最低限の掛け捨てで持つ。

資産形成は、別の金融商品で考える。

僕の中では、

だんだんこれが一番しっくり来るようになった。

でも、

営業として生活していくには、

商品を売らないといけない。

特に、

保険料が大きい商品は、

営業側の収入にもつながりやすい。

自分の収入。

営業成績。

プライド。

一方で、

自分がお客さんだったら、

本当に同じ提案をするのか。

その二つが、

どんどん離れていった。

売れる人が正義、みたいな空気にも馴染めなくなった

営業の世界なので、

数字が大事なのは分かる。

売上がなければ、

会社も営業も成り立たない。

結果を出した人が評価される。

それ自体は、

当然だと思う。

僕自身、

もともとは、

自分は仕事ができる方の人間だと思っていた。

だから、

結果を出したかった。

負けたくなかった。

でも、

だんだん、

「売ってくるやつが一番偉い」

みたいな空気そのものが、

しんどくなっていった。

売れる。

でも、

自分が正しいと思えていない。

その状態で、

さらに数字を追う。

そこに、

自分の中でかなり大きな矛盾ができていた。

最後は、ベッドから出られなくなった

最終的には、

心身の調子を崩した。

家のベッドから、

ほとんど出られなくなった。

今振り返ると、

仕事量だけが原因だったとは思っていない。

自分の収入のため。

自分の成績のため。

自分のプライドのため。

でも、

自分自身が、

本当に正しいと思えない。

その葛藤が、

かなり大きかったんだと思う。

負けたような悔しさもあった。

でも、

もうこれ以上、

自分が正しいと思えないことを、自分のために続けるのは無理だった。

保障としての保険は、今でも必要だと思っている

だからといって、

僕は保険そのものを否定しているわけではない。

保障としての保険は、

必要な人には必要だと思っている。

家族がいる。

自分に何かあった時、

残された人の生活を守りたい。

そんな時、

保険は非常に便利な仕組みだと思う。

ただ、

僕の中では、

保障と資産形成は分けて考えたい。

それだけだ。

今、

若い人から、

「保険どうしたらいい?」

と聞かれたら、

僕ならまず、

必要な保障額を考える。

必要な分だけ、

掛け捨てで確保する。

その上で、

資産形成は別で考える。

たぶん、

そう答える。

保険を使うなら、もっと後でもいいと思っている

資産形成がある程度進んで、

老後のことまで考える段階になった時、

保険を使う選択肢はあると思う。

例えば、

長生きすることで、

資産が尽きるリスク。

そういうものを、

保険という仕組みでカバーする。

僕なら、

そんな使い方を考える。

若いうちから、

何十年も動かしにくい形で資産形成するより、

まずは柔軟に資産を作る。

そして必要になった時に、

保障として保険を使う。

今は、

その方が自分にはしっくり来る。

保険を嫌いになったんじゃない

昔の自分を、

全部否定するつもりもない。

当時は、

本当に良いと思って提案していた。

その後、

勉強する範囲が広がって、

考えが変わった。

ただそれだけだ。

でも、

営業としては、

それがかなり致命的だった。

自分が心から良いと思えないものは、自信を持って売れない。

保険を勉強したら、

保険が売れなくなった。

正確には、

保険以外まで勉強した結果、「保障としての保険」と「資産形成」を分けて考えるようになった。

そして、

その考えと、

営業として求められることの間で、

自分が持たなくなった。

今なら、

あの時なぜあんなにしんどかったのか、

少し分かる気がしている。

仕事については、
仕事は、生活のため。それでいいと思ってる。
にも書いている。

仕事は大事。

収入も大事。

でも、

自分が正しいと思えないことを続けてまで、

守りたいものではない。

少なくとも、

僕はそうだった。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次